プラントに来て、少し日が経った。
　まだ気持ちが落ちつかないのは、今の状態が中途半端な平穏の上に成り立っているからである。
　なんとなく戦争が終わったような気分でいる人たちも多いが、まだ正式な和平が成立したわけでもなく、はっきりしないもどかしさが続いている。
「どうかなさいまして？」
　ラクスの声にカガリは慌てて顔を上げた。
「え…あ…。いや、ちょっと…考え事をしていただけだ」
　カガリの返事に「そうですか」と小首を傾げるとラクスは優雅な仕草で花の香りのするお茶を口に含んだ。
「なんだか…不思議な気がするんだ。こんなに平和だと」
　そう呟いてカガリは遠くを見る。
　少し離れた芝生の上ではアスランとキラが沢山のハロたちに囲まれている。
　それは少し前まで見ることの無かった穏やかな風景。
「でも…こういう日がこれからも続くと良いですね」
　そう云ったラクスの瞳は少年たちよりも遥か遠くを見つめていて、カガリは胸の奥にちりりとした痛みを覚えた。
「私たちが…作るんだろ。その平和を」
　自分に言い聞かせるようにしてカガリが決意を口にする。その言葉にラクスが目を細める。
「そうですわね。私たちが」
「多分一筋縄では行かないだろうけど、何とかなるよな。うん。なる」
　握り拳でカガリは宣言する。
「だから、これからも仲良くしよう」
　ウィンクにラクスが頷き返す。
　これからも、これまで以上の難題が待ち受けているだろうけど…きっと大丈夫。
　今ここでラクスが微笑んでいるように少し時間がたてばもっと多くの人々が笑いあえるようになる。
　そうしようとカガリは自分の心に言い聞かせた。

END
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