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「なぁ。なぁ」
「イナミン…」
「おーい！」
「おーい！聞いとんのか伊波！」
肩を掴まれて振り返った飛鳥は「不機嫌」と張り紙されるような表情で目を伏せると両耳から耳栓を外した。
「晃…。あからさまに無視してるのがわからない？」
爽やかな笑みを口元に浮かべながらも目は不機嫌そうなままだ。
「…オノレは……何故にワイを無視するんや！」
効果音をつけたくなるような勢いで晃は飛鳥の襟を捉えて持ち上げようとする。
「始末書」
短い言葉に勢いを削がれる。
「晃がこの間壊した灯篭。戦闘中って事で一応はお目こぼししてもらえたんだけど、あれ…重文だったらしくてあちこちうるさいらしいよ」
その件で報告書を求められたのだと告げられ晃は頬を引きつらせる。
「あの場にいたのは俺たち三人だけだし…。鼎さんはまっさきに逃げるからオレが引き受けたんだけど、晃が書いてくれると言うなら今遊んでやっても良いけど」
おしつけがましい飛鳥のセリフも普段なら笑ってごまかす晃だが自分に非のあることがわかっているのかただ、ただ、頬をひきつらせるだけだ。
美しい文字、正しい言葉遣い、上手く隠した上での詳細な報告。
どれも晃の仕事ではない。
「はははははは…………。じゃ…まかせたわ。がんばれよ。じゃあな！イナミン！」
逃げ足だけはぶっちぎりで一目散に逃げて行く友の姿に飛鳥はため息を吐くと再び書類に目を落とした。
おしまい
200411162013
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