「あーもー疲れた！」
　わざとらしい声を上げて夏子は訴える。
　これで今日何度めだかわからない呪詛。
　崩れたりバランスを失った封印や龍脈の修正作業にもう何日も郷の外を飛び回っているのだ。
「でもあなたの手際の良さにこちらとしては随分と助けられてるのよ」
　同行している深雪の言葉に夏子はにこりともしない。
「だから…疲れるんですよ。優秀だから、人の倍近い仕事量熟せちゃうから。もー損な役まわり！」
　早く片付けて学校でのんびりしたい！！
　そう口にしながらも龍脈の乱れを見つけては正してゆく。その手際の良さは賞賛に値する。
「ところで嘉瀬さんは、この出張でなにか特別手当が付くんですか？」
「いえ。通常出張の扱いよ」
　神祇庁もマニュアル的なお役所の一部なのだと肩を竦める。
「あら、それでも羨ましい。あたしなんか日当も無い通常任務扱いなのに…」
　ボーナスよこせ！
　叫びながら目の前に現れた天魔を鎮めてゆく。
「あーもーやってらんない！確かこの山の向こうには温泉があったはずよね……。そこまで全部鎮めてやる！」
　腕を振り回し気合いを入れる夏子の姿にただ苦笑した。

おわり
200406262151