「あるときは凄腕カメラマン。またあるときは秘密部隊のCIC……その正体は」
　カメラのレンズを磨いていたミリアリアはそう言って鏡を見た。
「いつも可愛い笑顔のミリアリアちゃん」
　自分で口にした途端虚しさに襲われ肩を落とす。
　湖底生活にも大分慣れては来た。
　ただオフの暇さだけはどうすることも出来ない。
　艦内に娯楽施設もあるが…いかんせん自分の趣味ではない。
　結局暇な時には商売道具のカメラを磨いたり撮りためた写真を整理することになる。
　戦後本格的に撮り始めた写真…。
　元々は遊びのように撮っていたのだが、いつの間にか仕事にしようと思った。
　きっかけは些細なことだった。
「この写真…」
　アークエンジェルのブリッジクルーで撮ったのはオーブに着いた直後だった。
　ほんの僅かな面会時間に会うだけだった両親。
　その両親に渡すために撮ったもののついでだった。
　サイ、カズイ……それからトール……。
　フレイとキラがいないのは断られたから…。
　かわりにとか言って割り込んで来たムウたち…。嫌がるナタルを引っ張りこんで笑っていた。端の方に写りこんだチャンドラやノイマン……。
『最高の笑顔で行かないとな』
『どなたかに送りたいんですか』
『君のために。なんてな……オレは家族なんていないから…未来の恋人に渡すかな…』
　はじめの言葉ははっきりと。続いた言葉は小さな声で。
　本心など語らぬ男が漏らした呟き。
　その言葉通りこの写真はいまマリューの手元にもある。
　それと友人とその家族の手元に。
　あの頃の笑顔。
　めくっていくうちに一枚の写真に手が止まる。
　キラとカガリ、それにアスランやラクス、サイ……とディアッカが一つのテーブルで楽しそうに笑っている。
　三艦交流会のひとこまだ。
「あーあ…」
　二枚の写真を手にベッドに倒れ込む。
「…また……」
　トールとディアッカが出会っていたなら意気投合したかもしれない。
　二人は似てるから。
　甘え方はトールの方が上手だったけど。
「早く…平和な笑顔を撮りたいものね。トール…」
　もう一枚に写るザフトに戻ったバカ二人の顔を指で弾いた。

おしまい
200606051014