「悪いことは言わない」
「きみを思ってのことだ」
　サイとキラに肩を叩かれ、ディアッカは頬を引き攣らせる。
「あ”？」
　なにゆえにこのようなことに？
　部屋の隅に連れて行かれ真剣な眼差しの男二人に囲まれたことに危機感を覚える。
「ミリィの料理だけは断るんだ！」
「皮剥きはさせてもいいけどそれ以上は駄目だ！」
　それから二人は声を揃えて「人として生きたいなら」と言う。
「なんだよ。それは」
　首を揉みほぐしながらディアッカは尋ねる。
　まっとうな問い掛けに二人は重い溜息を付く。
「まずいんだよ。絶望的に」
「最終兵器って感じかな…」
　呆然と目を瞬かせる。
「トールもあれだけはどうにもならないって諦めて逃げていたし」
「僕は死を覚悟したよ」
　あんまりなセリフが次々と飛び出して来る。
　可愛い彼女の手料理を拒むのは男ではないと自負するディアッカではあるが、この二人の鬼気迫る表情が恐ろしい。
「悪いことはいわないから断るんだ。それが君の為だ」

　二人の説得も空しくディアッカは食べると断言した。
「どんなにまずくっても一度食ってみないとさ。それから個人レッスンで俺好みの味を教え込めばいいんだろう」
　料理以外もいろいろと個人レッスンしたいし。
　ある種、男らしい発言ではあるが哀れな未来を予見して二人は溜息をつくと友人の無事を祈った。

おわり