「キラ！ねぇ、あれ。あれが欲しいの」
　いきなり袖を引かれてキラは身体を仰け反らせる。
「ちょっ…フレイ…」
「ねぇ、見て」
　はしゃいだフレイの声にキラは仕方ないと肩をすくめると少女の示すディスプレイを見やる。
　そこにあるのは可愛らしいハート型のアクセサリー。
　作りも派手じゃないし、色使いがフレイに似合いそうだった。
　ちょうどペアで男物もあるのだという少女の声を聞きながらそれとはなしに値段を見る。
　金額が常識の範疇を越えていた。
　あまりのことに天を仰いでその値段の理由に納得した。
　プラントでも有名なブランドの名前。
「フレイ…。えーと…他の店も見てみない？」
　困り顔のキラを見てフレイは思いのほかあっさりと「いいわよ」と告げる。
　確かにフレイからみてもデザインの可愛さに対して値段が可愛くないことはわかる。
　以前の彼女ならここで駄々をこねただろうが今はそんなことしようとは思わなかった。
「良かった」
　安心したようなキラの声にフレイはくすくすと口元を押さえながら笑い出す。
「え…なに？」
「うんん。あのね」
　フレイは爪先立ちをしてキラの耳元にそっと囁く。
「今は、キラと一緒にいられるだけで嬉しいの」