合流したＡＡのブリッジに見覚えのある男の姿を見つけ、バルトフェルドは目に鈍い光を宿らせた。
「よぉ。元気にしていたか？」
　馴染みのクルーに声をかける。
「おかげさまで」
　寿命の縮まる思いは何度もしましたけど。
　そう笑ったクルーはバルトフェルドの視線に気付いて声を落とす。
「……ネオ・ロアノーク一佐です…」
　釈然としない。
　そんな口調だ。
「本人は地球連合の大佐だと名乗ってましたが、ヤマトは少佐だと言ってますよ」
　キラだけではない。
　マードックやアスランも彼はムウ・ラ・フラガなのだと言う。
「艦長は……なんとも…」
「まぁ…世の中にはよく似た人間が三人はいるらしいからな……」
　バルトフェルドはマリューの傍らにいる男の前に立つ。
「初めましてかな？アンドリュー・バルトフェルドだ」

　似ている…なんてもんじゃない。
　これは同一人物だ。
　バルトフェルドの直感がそう告げている。
　だが、どうやって生き延びたという？
　アイツの乗っていたストライクは霧散したはずだ。
　その瞬間を見たわけではないが、その時のことはここの全員が知っていた。
「……砂漠の虎か…」
「そんな呼び方もあったな」
　細かい言い草もそのままだ。
「まぁ…よろしく頼む」
「ああ。こちらこそ」
　握り返して来た手は確かに人間のものだった。


「あの状況で生きている可能性はないわ…」
　誰よりもマリューが知っていた。
「そうだな……」
　美味しくはないインスタントコーヒーの味にカップを見る。
「あの人…ムウより年上なのよ」
　兄がいたなんて話は聞いたことがない。
　そう呟くマリューの横顔を見る。
　彼女はまだ自分の感情を整理しきれてないのだ。
　恋人が死んだことにようやく慣れてきたのに……。
「頭で理解できないなら…感情に従えばいいさ」
　同じ顔、声をしているあの男に。
「…あなたは……」
「なんだい？」
　マリューは首を振る。
「ありがとう……」
「どういたしまして…かな？」
　これ以上縮まることのない二人の距離。
　お互いに臆病だった。
　だがその臆病さにバルトフェルドは感謝した。
　どんな残酷な結果にも今ならばまだ自分をごまかせると。

END
200605272016