紹介するよ。
　引き合わされた二人はぎこちなく挨拶を交わした。
「一応、初めましてだな。カガリ・ユラ・アスハだ」
「イザーク・ジュールだ」
　場所は戦艦エターナル。
　最早収納すべきフリーダムもジャスティスも…果てはミーティアまで失った裸同然の艦の中での顔合わせだった。
「デュエルのパイロット…だよな」
「ああ、そうだ」
「じゃぁ、礼を言わないとな。ルージュを助けてくれてありがとう。おまえには感謝している」
「…礼にはおよばん。あれはお前たちが防いでくれたプラントへの核攻撃に比べればささやかなものだ」
　平然とイザークは云った。
「そっか。でも、やっぱりありがとうな。お陰でアスランを助けることが出来た」
　アスランを？
　眉がピクリと動いた。
「こいつ…ジャスティスを自爆させただろう。ルージュがなかったら助けられなかったから」
　親指で傍らのアスランを指す。
『ジャスティスを…ジェネシスの中で自爆させた』
『あいつが…いなければ死んでいたよ』
『オレの恋人は、カガリって言うんだ』
　イザークはアスランと交わした言葉を思い出し口をぽかんと開けた。
「……アスランの恋人か…」
「へ？…あ…え………っアスラン！」
　イザークの言葉にカガリは恋人を見る。
「おまえ…わたしのことをなんて教えたんだ！」
「オレの恋人で女神様。そう、だろう？」
　カガリを抱き寄せるとイザークに見せつけるように頬にキスをする。
「バカヤロー！他人の前で何をする！」
「他人の前じゃなきゃいいのか？」
「ちがうっ！！」
　二人のやり取りにイザークは呆然とした。
　頭に咲いたのは花だけか？
　そうつっこみたくなるのをぐっとこらえる。
「ともかく、私は感謝しているんだ。それから、これからもアスランのことをよろしく頼む」
　抱き付くアスランを邪険に押さえ込んでカガリは再び礼を述べる。
「……ああ……ああ。だが、オレは別にそいつのことは…」
「でも、おまえはアスランの親友なんだろ」
　カガリの言葉にイザークは固まる。
　それはアスランも同じだった。
「カガリ……。どうしてオレとイザークが『親友』なんだ？！」
　アスランは力一杯否定する。
　イザークも同調して頷いている。
「ディアッカが…アカデミーでも仲が良かったって」
「はぁ？！」
　その声は二人から同時に漏れた。
「ディアッカのヤツ。よりによってなんて気色の悪いことを…」
　イザークは友の姿がないか辺りを見回すがＡＡのクルーと化しているディアッカがこのエターナルにいるはずもなかった。
「それはオレのセリフだ！イザークと親友だと？そんなおぞましい！キラならともかく、コイツだけは親友には絶対になりえん」
　力一杯否定しあう二人の姿にカガリは「似たもの同士じゃないか」という感想を喉の奥で飲み込んだ。
「わかった。二人は親友ではないんだな」
「当然だ！」
　声がハモる。
「ディアッカははじめ恋人だったとか云っていたけどなぁ…」
「冗談じゃない！！オレは女以外興味ないぞ。おまえは恋人がホモで嬉しいのか！？」
　凍り付いたイザークに対しアスランは大慌てで否定するとまたカガリを抱きしめた。
「バカ。それぐらいはわたしでもあり得ないことだと思ったさ」
　カガリは身体を離し、ポンポンと頭を撫でる。
　アスランが安堵の息を吐くのと同じころ、イザークがデュエルに向かって駆けて行く。
「ハッチをあけろ！足つきのディアッカをとっちめてやる！」
　わめき散らすイザークを憮然と見つめるアスランからカガリはそっと視線を逸らした。

END
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