「父さん！母さん！」
　キラは遠くに見えたその人たちの元へと駆けて行く。
　父も母も話すこともできずに別れたあの人同じように並んで彼を待っている。
「ああ、キラ！キラ！」
　こぼれ落ちる涙を拭いもせず、母親は駆け寄ってきた息子を抱きしめた。
「クサナギにいらしたんだ」
　カガリが乗艦者名簿を全て確認して探し出していた。
　本来ならもっと早く再会できていただろうが、確認や手続きの遅れからようやく今日再会したのだ。
　そんな親子の対面を遠くに見ていたアスランは眩しそうに目を細める。
　キラのお母さん。
　いつも一緒に…仲の良かった母親たち。
　カリダの隣にあったレノアの姿。
　今はもういない人の姿。
　どうにもならない感情を押し殺したとき、何かが手に触れた。
「アスラン」
　同じように並んで眺めていたカガリの手がアスランの手に触れている。
「大丈夫か？」
　前を向いたままカガリが尋ねる。
「え…」
「仲…良かったんだろう」
　アスランとキラの仲が良かったように。
「オレは大丈夫だ」
　同じように前を向いたままアスランは答える。
「そっか…。よかった…」
　視線を合わせないままカガリは微笑んだ。
『親子』の再会を見つめるカガリの思いも複雑だった。
　キラはカガリの中では完全に兄弟だが、ヤマト夫妻はカガリにとって両親ではなかった。
　言葉でも心の中でも表しきれない思いに口数が少なくなる。
「大丈夫だ」
　もう一度くり返したアスランがカガリの手を握り返す。
　お互いの不安や寂しさ、そして喜びを伝えあうように。
「うん。わたしも大丈夫だ」
　安心したようにカガリが目を細めたとき、二人を呼ぶキラの声が聞こえた。
「行こうか」
「うん」
　二人は微笑みを交わすと大きく手を振っているキラのもとへと駆け出した。

END
200312292139