♪　Happy Happy Birthday,What I could gave to you!　♪

　カレンダーの日付とにらめっこしていたカガリが力無く肩を落とした。
　あと三日。
　三日後にはアスランの誕生日だと云うのにあげるべきプレゼントが決まらない。
　キラは工具セットをプレゼントすると云っていたし、今は遠くプラントにいるラクスからはすでに新曲が届いているという。
　いったいどんなものなら喜んでくれるだろうか？
　好物のロールキャベツでも作ってやる？
　まさか。
　料理にはとんと自信がない。
　非常識でない程度に知ってはいるが、お世辞無しに「美味しい」と言って貰えるような自信がないのだ。
「………」
　プレゼント…。
　どうしようか…。
　
　
「えー、そんなんだったら僕、工具セットやめようかなぁ？」
　前日になってもまだ決まらないと悩むカガリの姿にキラが笑う。
「……何をやるんだよ」
　頬を膨らませるカガリの肩を抱くとキラは指先をくるくると回す。
「カガリにリボンをかけてアスランに贈ろうかなぁ？」
　にやにやと笑った表情にカガリは拳を強く握りしめる。
「あのなぁ！」
「ダメ？」
「なんでそうなるんだ？」
「喜ぶと思うよ『私を貰って』って」
　科を作る片割れの姿に鉄拳が飛ぶ。
「気持ち悪いことするな！」
　右ストレート一発。
「……ひどい！殴ることないじゃないか！」
「コーディネイターならこれぐらい避けろ！」
「避けたら怒るじゃないか」
「うるさい！そんなこというとお前をラッピングするぞ！」
　にらみ合ったまま間合いを取る。
　一触即発。
　そんな二人の元に控えめなノックが聞こえる。
　その音に二人は深呼吸を一つついて無謀な争いを納めた。
　
　
「その…すまない！」
　アスランに会うなりカガリは勢いよく頭を下げた。
「……どうしたんだ？」
「…折角の誕生日なのに…わたしはおまえに何も……」
　用意できなかった。
　何を渡せばいいのか最後まで決められなかったのだ。
　そうこうしているうちに仕事が入ってしまい何も用意できなかった。
　いろいろと貰ってばかりでそれに見合ったモノを返せる自信がなかった。
　そして今もそれを表す言葉が見つからない。
　どうすればいいのか…。
　そう思った瞬間、大きな手が自分の頬に触れた。
「ありがとう。その気持ちだけでオレはうれしいから」
　優しく微笑みかけてくる瞳。
「今日一緒にいられたことで十分だよ」
　カガリの日常の忙しさを思うアスランの言葉に目を伏せる。
「…アスラン…」
「なに？」
　カガリはゆっくり顔を上げ、自分の言葉を待つ人を見る。
「…来年も…」
「？」
「来年も再来年も……これからずっと…おまえが嫌になるまでわたしが誕生日を祝ってやるから。誰よりも一番に…」
　だから…。
「ありがとう。最高の贈り物だよ」
　アスランはカガリを抱きしめることで返事をする。
　カガリは真っ赤になってすぐ側にあるアスランの耳元に唇を寄せる。
「お誕生日おめでとう」

END
200310292208