女性の家に遊びに行くときに手ぶらは失礼だと教えられたのは子どもの時だった。
　相手の年齢に関係なく、なにかプレゼントを持っていくこと。
　そう教えてくれたのは多分母。
　律儀にも母に会う度に贈り物をしていたのは父。
　さて、自分は今日なにを持って行くべきか…。
　彼女はきっと気にしないだろうけど、自分の方が気になってしまうだろう。
　花か食べ物か…それともなにか作るべきか。
　作るには時間が足りない。食べ物も考えたが屋外での手軽な食事を好む彼女に今更可愛らしいプチケーキを持っていくのもなんだし…。
　いろいろと考えを巡らせていたら花屋が目に入った。
　たまには花も良いだろう。
　彼女に持ってゆくのなら…。
　
　
　ぴんぽ〜ん
　間延びした音にカガリは玄関に急いだ。
「いらっ…」
　ドアを開けるとそこに黄色い花が見えた。
「へ？」
　黄色い花の向こうに濃い色の髪が見えた。
「…………」
「おどろいた？」
　呆然とするカガリにアスランは嬉しそうだ。
「…すごく…」
　ひまわりの花束を抱えて微笑む男など滅多に見られるものじゃない。
「どうしたんだ…それ…」
「ああ、カガリに似合うと思って」
　花束を渡しながら何気ない仕草で頬にキスをする。
「オレの気持ち」
「………」
　初めてのことでもないのにカガリは耳まで真っ赤になっている。その初々しさにアスランは自分がにやけて行くのを感じる。
「ひまわりの花言葉って知ってる？」
「花言葉？」
「そう。花言葉」
　
　
　−−−−−−あなたをみつめています。
　

　END
　200309160021