「こうしていると落ちつくんだ」
　そういってアスランはカガリを抱きしめた。
　腕の中の少女はこの行動に慣れたのか大人しく抱きしめられている。
　時折、肩が震えるのは泣いているからなのかもしれない。
　いつも自信たっぷりにしているくせに、どうにも押さえることの出来ない寂しさや哀しさに襲われるときがあるという。
　その度に、アスランはカガリを抱きしめる。
　それはまるで自分が生きていることを確認するみたいに切ない動き。
　どんなに優秀なコーディネイターであっても人は人。
　感情があるのだ。
　普段は上手にごまかす胸の痛みも隠しきれないときがある。
　そのことをカガリ自身もよく分かっていた。
　誰かを抱きしめることで生命を感じる。
　それだけで癒される痛みがあることを。
「アスラン？」
　気分はどうだと問いかけるが返事はない。
　まだもうしばらくこうしていよう。
　お互いの熱が傷を癒すように。

END
200310061116