「逃げるな！生きる方が戦いだ！」
　言葉が胸に突き刺さる。
　生きること…。
　生き残って何かをすること。
　その意味…。
　死ねば全てを終わらせることになると思っていた心に、強く響く。
　ルージュのハッチが開いた。
「来い！アスラン！」
　差しのべられた腕。
　迷いはなかった。
「カガリ！」
　愛しいその人の元へ。
「ジャスティスの自爆のタイミングをジェネシスの発射に合わせた」
　残り時間はわずかしかない。
　カガリは素早くルージュを反転させると出せる限りの速度で中心部を後にする。
　死なせるわけにはいかない。
　待っている人がいるのだ。
　だから…。間に合ってください。
　どうかこの女性［ひと］を殺さないで下さい。
　オレを生かしてくれる、この女性を守って下さい。
　胸の石に、見えない何かに心の中でくり返した。
　爆風に弾かれ、宇宙の闇に躍りでたとき感じた恐怖。
　飛び散るジェネシスの破片。
　照準の狂った光。
　それらを感じながら、ただ願う。
　どうか…この女性とあの場所に帰して下さい。
　あの青い地球に。
　

END
200310181715