お仕置きです。
　そう言って唇が瞼に落ちる。
　額に、頬に、うなじに…唇以外の場所に口づけられる。
　お仕置きの理由は私が係の打合せで少し遅れたから。
　私たち以外、誰もいない生徒会室。
　唇の感触に私は真っ赤になる。
「誰か…来たらどうするの」
「見せ付ければいいんです。僕たちは全校公認なんですから」
　颯斗くんは強気だ。
　番長なんて白銀先輩は言っていたけど、確かにそんな気がする。
　一樹先輩があまりにもワンマンに見えたから、颯斗くんは大人しく見えていたけど、実際はすごいワガママ。
「颯斗くん」
「なんですか？」
　耳元に囁く声に続いてキス。
　吐息がくすぐったい。
「ねぇ…」
「？」
「キスだけじゃ足りないって言ったら？」
　言葉も口づけも止まる。
　赤くなった颯斗くんの頬を捉えて私からキスをする。
　強気に見えるけど、へたれな颯斗くん。
　髪を指で梳いてから、ピンとおでこを弾く。
「嘘」
　私もきっと真っ赤だけれど精一杯虚勢を張って、颯斗くんを見る。
「月子さん……」
「あのね、颯斗くん。私の夢、叶えてくれる？」
「夢？」
「そう。私の夢」
　颯斗くんは「僕で叶えられることならどんなことでも」と手を取り指先にキスをする。
　綺麗な顔。
　私はその顔に微笑みかける。
「大学を卒業したら、私を颯斗くんのお嫁さんにしてください」
　ほら。
　びっくりした顔。
　そして、優しい微笑み。
「嫌です」
　そう言ってキスしてくる。
「大学卒業まで待つなんて。本当なら今日すぐに貴女を僕の奥さんにしたいのに」
　今日すぐに。
　気が早いよ。
　でも、今日からは望み、認めてくれる人がいるならすぐにでも結婚できる。
「HAPPY BIRTHDAY、颯斗くん」

おしまい