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「おじちゃま。絵本読んで」
両手で抱えなければいけないほど大きな絵本を手に少女は男の前にやってきた。
絵本？
オレが？
指で示すと少女は力強く頷いた。
「オーケー。どこから読めばいいのかなぁ？」
少女を抱きあげて隣に座らせる。
「おひめさまがおうじさまをすくいにいくところから」
中盤ぐらいのページを開き示す。
お姫様が王子様を？
逆じゃないのかと思ったが確かに絵本では白馬に乗った美しい姫が茨に捕われた王子を救い出している。
「えーと、王子の腕に絡まる茨を薙ぎ払い、自由を取り戻すと姫は愛しい王子を馬に抱え上げ、暗闇の魔王の支配する黄昏の森を抜けだすために馬を必死に走らせました」
じっと真剣な眼差しで少女は絵本を見つめながら彼の言葉に耳を傾けている。
「馬がいまにも…」
「うまがいまにもいきたえようとしたそのとき、ふたりのまえにめがみがあらわれたのです」
少女はすらすらと続きを読み上げる。
「アリス上手だなぁ。パパかママに読んで貰ったのか？」
問い掛けに少女は首を振る。
「イザークおじちゃまに読んでもらったの」
にこにこと笑う少女に懸命に絵本を読み聞かせている友の姿を思い浮かべ吹き出す。
「イザークが？」
「そうよ。ディアッカおじちゃま」
そうかそうかとアリスの頭を撫でながらディアッカは笑いをこらえずにはいられなかった。
おしまい
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