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困ったな…。
そう呟いたとたんあの人の表情は心配性な兄の顔になった。
どうしたの？
問いかけるあたしにすまないとだけいうと、しばらく黙り込んだ。
仕方ないから、あたしはただ向かいに座って、この間手に入れたばかりの新しいお茶を入れる。
そうしているとあの人はまだ少し困惑していると云わんばかりの顔を向けてくる。
実はね。
妹とその恋人のことを話し出す。
本当はね、まだ恋人と言えるかどうかわからないんだ。二人とも中々の意地っ張りでね。
あたしもその二人のことは知っていた。
確かに手強そう。
そう答えると笑って、
そうだね。手強いよ。
とだけ言ってお茶を手に取る。
二口三口飲んでから気がついたように
美味しいお茶だねと笑顔をくれた。
お互い好きあってるなら早く認めちゃえばいいのよ。
あたしの言葉に一瞬だけ驚いて、それから声をたてて笑い出した。
そんなことできないから大変なんだよ。
恋人じゃない兄の顔。
そんな表情をされたらこっちが嫉妬してしまう。
だからあたしはずっと身を乗り出すと、あの人の頬を両手で挟み込む。
バカね。恋は出会った瞬間からはじまってるのよ。
じっと目をのぞきこむと穏やかな表情の向こうにいたずらっぽい輝きが見える。
そうだね。それに早い者勝ちだ。
でしょう。あの二人だって、すぐに気がつくわよ。そして後悔するの。どうして意地をはってたんだろうって。
END
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