| ディア・ブラザー |
| 「アニキ〜〜〜〜」 大きな声で呼び止められてオスカーは足を止めた。 「パラディンになったんだろう。新しい武器はなんにしたんだ？」 駆け寄ってきたボーレは待ちきれないと言った様子でその場で足踏みを繰り返す。 「新しい武器？」 「そう、パラディンになると新しい武器を収得するって聞いたから」 ああ。 オスカーは手にしていた野菜のかごを持ち直すと弟に告げた。 「剣にしようと思うんだが」 兄のセリフにボーレは動きを止める。 「ちょっとまってくれ！」 「ん？」 「この間話しただろう！兄弟同じ武器で一斉に攻撃する必殺技を作ろうって！」 そんな話があったような気がするが、このところすっかり裏方に回っていたために忘れていた。 「あ、そんな話もしていたな」 「やめてくれよ………。せっかく研究した必殺技の配列なのに」 「すまない。じゃぁ弓にしないとな」 「とうぜんだろう！」 わかったよ。 これから料理を作るからまたあとで。 そう弟を追い払ってから厨房へと向かう。 すっかり忘れていた自分にオスカーは頬を掻いた。 「あ〜〜〜、つかれた〜〜〜」 腕を振り回す妹の姿にアイクは苦笑する。 「なにがそんなに疲れたんだ？」 急に声を掛けられたミストは『お兄ちゃんいたんだ』とつれない返事をする。 「いまね、エリンシア様に剣を習ってるの。前線に出ている以上、少しは使えた方がいいって言われたし」 「おまえが？」 その小馬鹿にした言い方にミストは頬を膨らませる。 「あたしだってお父さんの娘なんだから、すっごい剣士になるかもって」 「……おまえ…腕力無いからそれは無理だろう」 ぽんぽんと頭を撫でられ、ミストはアイクを睨みつける。 「む〜〜〜」 ぎっと睨んだままの妹に「なんだ？」と問いかける。 「別に腕力無くても出来るもん。タニスさんがこれを使ってはどうかって教えてくれたもん」 かなり使い込まれているようには見えるが、それが何かはアイクは知らない。 「お兄ちゃんには使えない剣なんだからね」 「それはなんだ？」 興味津々と云った様子にミストは少しだけ溜飲を下げる。 「これはね、ソニックソードっていって、魔力が高い人ほど強い力が出せるんだって」 だからお兄ちゃんには絶対に無理だからね。 「………………まぁ、がんばれ」 妹の機嫌を損ねないようアイクはただ一言そう告げた。 「はぁ」 そんな二組の兄弟妹の会話を眺めていたマーシャが重いため息を吐いた。 野営地のはじで話し込んでいる兄の姿に遠い目をするしかなかった。 ＥＮＤ |
| 気力・体力・時の運より再録。 アイクのミストに対する甘やかしっぷりが大好きです。 |