「一緒に帰ろう。総士」
　ジークフリード・システムを通して流れ込んでくる一騎の思いに総士は答えることが出来なかった。
　いつだってそうだった。
　こんなに近くにいるのに。
　近くにいるからこそ答えられないもどかしさ。
　一騎だけではない。
　同じ思いを真矢や剣司、カノンだって抱いているだろう。
　一緒に帰ろう。
　あの島へ。
　Ｗ１７５　Ｎ５７
　竜宮島のある場所。
　そこでは沢山の人が自分を迎えてくれるだろう。
　沢山の人と…そして乙姫が…。
　だがもうそんな時間など残っていなかった。
　だからそのことを伝えなければいけない。
　自分を失ったあと…一騎はどうするだろうか？
　傷つき、悲しみ、苦しむかもしれない。
　だが、それを必ず乗り越えて行くだろう。
　一騎のそばには仲間がいる。
　彼らが互いの悲しみや痛みの先に未来を見いだすだろう。
　そして……乙姫も…。
　さっき一瞬だけ乙姫の心が聞こえてきた。
　彼女も選んだのだ。
　その答えを。