| 「総士。ねぇ、この服はどうかな？」 緑のサマードレスを着て大きく手を広げてはくるりと回って見せた乙姫の姿に「いいじゃないか」とだけ返す。 「さっきもそれ言ったよ。どこがいいのか言ってくれないと。ホント、オンナゴコロが分かってないなぁ。総士は」 頬を膨らませて怒ってみせる妹の姿に困惑するしかない。 これまで会話をしたことの無かった妹に女心といわれても…。 「学校に着ていくんだからまじめに考えてよ」 「なんだっていいだろう。この制服でないなら」 アルヴィスの外にいる時は仕事でない限りは制服は着用しない。 それは分かり切ったことだった。 「……総士…いままでどうやって服を選んでたの？」 「適当に組み合わせて」 竜宮島にも流行という物はあるが、それを作り出す側に総士はいたので深く考えることはなかった。 服だって、見栄えの悪くない物を自分の成長と気候に合わせてチョイスするだけだ。 「いいもん。総士以外の人に見て貰うから」 ごっそりとした布のかたまりを抱えようとするがうまくいかない。 「……どれでもいいだろう。可愛いんだから。自分の一番気に入った物を選べば」 布をかき集め、乙姫に持たせてやる。 なんでそんなどうでもいいことに悩んでいるんだ。 そう言いたげな総士の表情に乙姫は抱えたばかりの服の束を総士の頭上へと放り投げた。 「乙姫？」 女物の服に埋もれながら総士は呆然と妹を見た。 「総士…そういうセリフはね、彼女には言っちゃダメだよ！一番困らせるんだからね」
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